INTERVIEW インタビュー
日本サウナの現在と未来
笠間聖司(HARVIA JAPAN CEO)× ととのえ親方(プロサウナー)
サウナをブームから文化へ。
『一家に一台サウナ』の実現へ向け、日本市場にマッチした「サウナ&スパ製品の開発」、「施工・保守メンテナンス等のインフラ充実・拡大」を目的とし、株式会社HARVIA JAPAN(ハルビアジャパン)が設立。2024年2月には、東京・赤坂に日本最大級のサウナショールーム「HARVIA SAUNA STUDIOTOKYO」がオープンした。
サウナ&スパの世界No.1ブランド・ハルビアが、いよいよ“日本サウナ市場に本格参入“という流れだが、いったい今の日本サウナは、どういうフェーズにいるのだろうか。
そして、これからどうなっていくのだろうか。
HARVIA JAPAN CEOの笠間聖司氏と、全国各地でサウナ施設のプロデュースを手がけ、日本サウナカルチャーをリブランディングし続けてきたプロサウナー・ととのえ親方の2人に、「日本サウナの現在と未来」について語ってもらった。
笠間聖司
北海道生まれ。1986年から30年以上に渡り、ビジネスを通じてフィンランドの歴史や文化、経済の発展を見つめ、100回以上渡航。現在は「世界一幸せな国」である同国に学び、フィンランド人の幸福度の高さの大きな一要素である「サウナ」を日本にも広めることで北海道と日本の幸福度向上を目指し日々奔走している。モットーは「毎日楽しい瞬間を見つける」!
ととのえ親方(松尾大)
複数の会社を経営する傍ら、日本全国のサウナ施設のプロデュースを手掛ける実業家にしてプロサウナー。多くの人を“ととのう”状態に導いてきたことから“ととのえ親方”と呼ばれるように。秋山大輔(サウナ師匠)と共にプロサウナーの専門ブランド[TTNE]を立ち上げ、サウナ界における様々なジャンルで活動を展開している。
⸺日本は空前のサウナブームと言われていますが、今の日本のサウナをどう見ていますか?
親方:日本の施設はね、とんでもないレベルになっていますよね。
世界に誇れるレベルになってきている。
笠間:本当に。日本のSAUNACHELIN(サウナシュラン)(※)を見ていても、間違いなく世界に誇れるものだと感じます。すごく大きなムーブメントですよね。
このムーブメントがますます加速しているから、さらに拡大していきますよね。
※SAUNACHELIN(サウナシュラン) https://www.saunachelin.com/
全国12,000施設以上のサウナ施設の中から、既存の枠に捉われず、新しい試みにより新たなサウナの価値を導き出した革新的なサウナ施設を、“今行くべき全国のサウナ施設”として毎年11 月11 日に発表・表彰する国内最大級のサウナランキング。
親方:拡大していきますね。やっぱりすごいなと思うのが、日本にある温浴施設の数ですよね。こんなに温浴施設ある国、他にはないじゃないですかね。1000円ぐらいで入れてね。
とんでもない国ですよ。
笠間:地元の銭湯に行って、数百円でお風呂に入れて、サウナに入れて。さらに満足を得るために、週末には日帰り温泉に行ってね。様々な入り方があるじゃないですか、日本って。
昔で言うと、石原裕次郎が出てきて、初めて映画館に行った時のあの感激とか、カラオケができて、カラオケボックスにみんなで行く感動とか、それと同じような感じで。
その体験を感じるために、みんなサウナに行き続けて、習慣化していっていますよね。
親方:だから、サウナはブームで終わらないと思うんですよね。
すごい文化になってきているなと思っていて。
もう本当にね、高校生とか中学生の集まる場所が、スーパー銭湯みたいなところだったりするっていうね。昔ではちょっと考えられないですよね。まぁ銭湯は行っていたけど、僕ら世代も子どもの頃に。
笠間:すごいですよね。
高校生が卒業式の後に行く場所は、サウナだったって聞きましたよ。あと、サウナグッズを扱っているところに、お父さんが子どものためにグッズを買いに来るだとか。
これって特別なことですよね。
⸺ 日本のサウナは、この後どうなっていくでしょうか?
笠間:サウナブームに馴染めなかったりしている人もいるじゃないですか。 例えば、暑いのが苦手だとか、
サウナに行ったら仕切り屋がいて嫌だったとか、水風呂にはどうしても入れないとか。そういうストレスを感じている人もいるんですよね。
そういう方々が次に動くとして、考えられるのは……逆にサウナを自分で作ること。
プライベートサウナを作ることによって、自分の好きな温度に設定できる。自分の好きなタイミングで入れる。人に邪魔されることもない。
そういう流れができてくると、少しずつサウナの本場・フィンランドに文化が近づいていくんじゃないかなと。
親方:550万人の人口に対して、300万のサウナがあると言われているフィンランドだと、もっとサウナが日常に馴染んでいて、すごく自由ですよね。
サウナの中で本を読んだり、昼寝をしたり、ビール飲んだり、とかね。やっちゃダメだけど(笑)。
笠間:それぐらい、サウナ室を自分好みに自由に変える。
型がないのがサウナの本質のなのかもしれないですね。
フィンランドに行くと、書いてあるじゃないですか。
「サウナにはルールはない」って。
サウナの自由さを楽しむことができるのが、プライベートサウナ。
親方:それぞれが、それぞれの好みのサウナを作って、自由にサウナを楽しむ。
それが一番いいですよね。
笠間:昔、ガキんちょの頃、自宅にお風呂がある人って少なかったんですよね。で、
銭湯に行こうと誘いに来る友達がいたんですよ。うちらの世代には。
家にお風呂がないのが当たり前だった。それがだんだん、100軒に5軒お風呂がついて、もう少し経つと100軒に10軒ついてきて……「あそこの家、風呂あっていいな」って、どんどん増えていった。
そういうことが、日本でサウナを設置していくことによって起きるんじゃないだろうか、と思っているんです。
大人はあまり言わないかもしれないけど、子どもが「うちにはサウナがあるんだよ」とか言い始めて(笑)。100軒に1軒、100軒に5軒、100軒に10軒と、どんどんサウナがついていって。5年、10年もすると、結構の率で浸透してくるのかなと。
そんな時代が来ると嬉しいですよね。
親方:嬉しいですよ~。
でも、そういう感じになるんでしょうね、本当に。
笠間:ハルビアジャパンを作って、ショールームが全国にどんどんできていますが、
すでにたくさんの人が見に来てくれているんですよ。真冬の大雪の札幌にも、1日に何人も来てくれるんです。そこにいらっしゃる方が必ず言うのが、「思ったより安いですね」なんですよ。
ということは、「サウナがいくらで買えるのか」っていうことも想像ついていないわけだし、自分の家にサウナがつけられるとも思っていない。
そのことを解決するために、ショールームのフラッグシップショップを札幌と東京に作り、ディーラーショールームを全国60店舗、いま建設しているんだけど。
皆さんがそういう気づきを得てくれて、東京や札幌だけじゃなく、日本中でプライベートサウナムーブメントが起きていくと嬉しいですよね。
親方:家にサウナあるって。いいんですよ。
やっぱりね、お風呂とはちょっと違う。「笠間さん、俺んちのお風呂で一緒に入ろうよ」なんて言って、2人でお風呂入ったら気持ち悪いから(笑)。
でも、サウナは2人で入ることができるんで。そういうのがすごく大事というか。お風呂は2人で入ったらちょっとね。真っ裸で笠間さんと俺が入ったら、気持ち悪いでしょ。でもサウナってね、なんかそれができちゃう。それが男女でも。例えばお母さんともバスタオル巻いて入れたりだとか。
フィンランドって、全部そうじゃないですか。息子と親父がサウナ入ってたり。
息子ともお風呂は最近2人で入れないもんね。
笠間:フィンランドでは、「サウナに入るとフランクな会話ができる」って言われているんですよね。だから政治も経済も文化も家族のこともすべて、 必ずサウナに入って話す、と。
特によく言われているのは、週末にサウナの時間を作って、家族が集まって、そこで1週間の話をするって。 そんなことができれば、家族のあり方がまた変わってきますよね。
これから、3年5年で、日本のサウナ文化は、間違いなく変わりますよ。
⸺サウナブームはそのうち去って、衰退していくんじゃないかという声もありますが、2人はそう見てないってことですよね?
笠間:まったくそう見てないですね。
真逆だと思いますよ。
親方:
日本のお風呂が家庭に入ったのって、 今から70年ぐらい前なのね。そこからお風呂がどんどん家庭に入っていった。
NORITZ(ノーリツ)っていう会社が、1951年に「お風呂は人を幸せにする」と創業して、風呂釡を作って、ガス給湯器を作って……と家庭のお風呂文化を広げていったわけ。
日本には、温泉文化、お風呂文化がもともとあったから。70年かけて、今ほとんどの家にはお風呂かシャワーが入っている。
で、逆にフィンランドでは、70年ぐらい前、1950年にハルビアというサウナブランドがスタートしていて。
フィンランドには温泉がないのね。だから小屋の中でストーンを温めて水をかけて、というサウナ文化が広がっていた。そこに日本のノーリツと同じタイミングで、フィンランドではハルビアが創業して、70年かけてアパートタイプの住居にもサウナを広げていって、「一家に一台サウナ」という文化が出来上がっていったんだよね。
それで日本は日本で、お風呂を各家庭につけていったんだけど。今、サウナの入浴の素晴らしさが、日本人もわかってきた。「サウナ入浴って体にも負担ないし、いいじゃないか」「こんなに心地いいもんなんだ!」と。
ロウリュ をして、ふわーっと蒸気がおりてくる快感というか気持ちよさって、ここ5年でやっと日本人が理解し始めた感じなわけで。
笠間:今までってカラッカラのサウナばっかり入っていたから、わからなかったんですよね。
それだと体験にならないから。ドライサウナだけではこれだけのサウナブームは続かなかったんですよ。暑いだけだから。
それと、ドライサウナだったら、間違いなく自宅につけようというムーブメントは広がっていかないでしょうね。
親方:うん。広がらないでしょ。
ちゃんとロウリュができるっていうのが大事。
僕らからすると、お風呂に肩まで浸かって、「ああ、気持ちいい」という感じと、フィンランド人たちがサウナストーンに水をかけて、わーっと蒸気がおりてきて包まれる感じは、多分同じだと思っていて。
この気持ちよさをわかった日本人、しかもサウナに入って水風呂に入る心地よさをわかった日本人は、「そんなもんが家にあったらめちゃくちゃいいじゃないか」と、家庭に絶対的にサウナを入れていくはず。サウナが家にあるっていうのはすごいことになるなっていうのが、 もうわかっちゃっている人が増えてきているよね。
笠間:それがあと3年、5年でどのように浸透していくか。
本当にびっくりするくらい浸透すると思うんですよね。
だって親方ね、自分がガキんちょの頃、初めて洗浄便座を経験したんだけど、水が顔にかかってきて、「なんだこれ!」みたいな感じだったんだけど(笑)、 あっという間に数年で、全国に浸透したじゃないですか。それと似ている感じだと思うんですよね。
新しい文化っていうのは、馴染んでいくと、100軒に1軒、100軒に5軒、100軒に10軒と、間違いなく一気に加速すると思うし。
親方:それに合わせて、いい商品をどんどんできていく。で、価格競争もあって、みんなが無理なく買えるアフォーダブルな商品が生まれていく。
そういうことができたら、素晴らしいですよね。
笠間:私、よくね、「サウナは軽動車の価格で買えますから」と言っているんだけど。
今は軽自動車の価格高いから。もう軽自動車よりサウナの方が安いから。買う方は多いですよね。
ただし、残念ながらサウナを自宅につけられると思っている方が、多分100人中数人しかいない。これが大きく変わっていけば。
そのために今回、赤坂にショールームを作って、さらに全国に広げていって、接点を増やしていく。 それで本当に浸透してくると、私は一気に変わると思っていますよ。
親方:間違いないですね。
笠間:まずは、今年中に親方と私が自宅にサウナを作る!
親方:ですね。作らないと(笑)。